インコプフ

自己承認欲求と作文欲求の結晶

『昭和史 1926-1945』

 

昭和史 1926-1945 (平凡社ライブラリー)

昭和史 1926-1945 (平凡社ライブラリー)

 

 

 

きっかけはこれ

この一冊 2015年から2016年へ - Chikirinの日記

 

なんとはなしに読んでいたちきりんのブログで見付けた

半藤一利氏の『昭和史』 が、過去を振り返るために不可欠の教科書だとすれば、 

 という一言。

 

 

 

感想を書いてある記事も見付けたので読んでみると、

半藤一利氏 『昭和史』 - Chikirinの日記

『昭和史 戦後篇』 を読んで - Chikirinの日記

 

これこれ、と。

こういう本が読みたかったと感動感謝。

 

 

 

 

中高と、社会科は好きだった。

でも、どうも薄っぺらで上辺をすーといく感じで、

なんでそうなるの?で、どうなったの?が知りたいのに不満はたまっていく一方。

 

あげく、平安とか鎌倉とかはやたら詳しくやるのに

肝心な明治後期から昭和、戦争、戦後、昭和後期の近現代史はほとんどやらない。

 

 

 

なんでいまの社会はこうなっているの?

と疑問におもうのはきっとおれだけじゃないし、

それに応えられるのは歴史、それも特に近現代史を教えることだけなのに

それをしない。その方法も教えない。

 

 

そんな鬱憤を晴らすのがこの一冊だった。

 

 

 

 

 

 

 

この半藤ってひとはどんだけの量の文献を集めて読んで解釈して繋ぎ合わせたのか

どんだけのひとと会って話しを聞いて解釈して繋ぎ合わせたのか、

そう驚嘆するくらいにこれでもかとその当時の史料を参考にしながら、

時系列的に語ってくれている。

 

文字も小さめですごい分厚いからはじめは引くけど、

(実際に読み終わるまで1ヶ月かかった。ディズニーランドからハワイまで持っていき、ようやく高知で読み終わる。)

池上彰さんのような語り口で(池上彰さんのほうがあとのひとだけど)

とってもわかりやすく書かれているから、抵抗なく読めることもすごい。

 

ごちゃごちゃと複雑で奥が深くてキリがない歴史を、

適切に、たのしく、考えさせるように、語るこの能力には羨望しかない。

 

 

 

 

 

もうほんと、いままで知らなかった昭和の歴史が手に取るように想像できて、

しかもおもしろくて最高な内容なんだけど、

中でも印象的だったのが

  1. 明治の開国から、日本史は40年周期で廻っていること
  2. 意外と戦争に乗り気ではなかったということ
  3. 昭和天皇がしっかりしたひとだったということ
  4. 三国同盟とか習うけど、そんなに同盟じゃなかったこと
  5. 徳富蘇峰が活躍していたこと
  6. 半藤さんの「昭和史」からの教訓がいまでもピタリなこと

かな。

 

 

まず、1については、なるほどなあと感心した。

 

ペリー来航から朝廷が開国を決めたのが、1865年。

ここから明治維新が起こって新たな日本が誕生して強くなる。

その強さを世界に知らしめたのが日露戦争勝利の、1905年。

これで調子に乗って領土を広げるために中国に進撃で泥沼化する。

引き返せなくなって太平洋戦争で300万人を亡くしたのが、1945年。

這い上がって高度経済成長をし、世界1、2位の経済大国になる。

バブル景気も手伝って経済の絶頂期だったのが、1985年。

その後、プラザ合意、バブル崩壊、失われた10?年、震災、etc。

このままいくともう一度完全崩壊するのが2025年。

 

ということを冒頭で言っていて、へえええええなるほど!と感心した。

 

 

 

つぎに、2・3・4に関しては、完全にじぶんの無知を覆されたことで印象に残った。

 

なんとなく、すごいイメージとしてだけど、

昭和の日清戦争あたりから政府なんてものは機能してなくて、

陸海軍と昭和天皇がいっしょになって「戦争やろうぜー!」って感じで、

その最終結果が、太平洋戦争敗北。

ドイツとは仲良くて、イタリアと3者協力して米英蘭と争ってた!!

 

なんてふうにおもってた。

 

 

でもほんとうは全然違くて、

政党はぎりぎりまで機能していたし、

海軍の何人か(有名なのは山本五十六)は最後まで米英との戦争に反対していたし、

昭和天皇はまっとうな考え方の持ち主で時勢を見極められていたし、

そもそも基本的に米英との戦争はしないほうがいいってみんなわかってたみたいだし。

 

もっとみんなアホなんかとおもっていたら、

なんにんかの血迷ったひとに引っ張られて、

世の流れも戦争に向かっていって、そこに流されて・・・って感じだった。

東条英機とかももっと名前出てくるかとおもったらまったくそんなことなくて、

インパール作戦はひどいけど)

もっとひどい政策をとったひとはたくさんいた。驚き。

 

 

 

5に関して、

新島襄の一番弟子とも言われる徳富蘇峰

大したことできなかったって教えられた記憶があるんだけど、

文化人として必ず名前が挙がるし、

ミッドウェー海戦後の、日比谷公会堂を超満員にした「日本文学報国会」なるものでは

会長を務めてるし・・・!

戦争賛美の節も見当たられるけど、

時勢もあるしそれはそれとして、すげえんだなと知った。

 

 

 

6はこれまた半藤さんの教訓だけど、日本国民は特性として、

①国民的熱狂に流されやすい

②抽象的な観念論を好み、具体的で理性的な方法論の思考から逃げる

③国際的常識がない

④有事にあたって対症療法的で短兵急な発想しかできない

などなどとあって

これまた、いまでもじゃん!そしてじぶんたちもじゃん!とおもった。

 

 

主観的で御都合主義、全体を俯瞰できずに流されて問題を起こす。

問題に対してもその場しのぎで国際的常識に欠けた対処を取る。

 

 

学びたいものだ。

 

 

 

 

 

昭和史はもう一冊ある。

また、ゆっくり読もう。