インコプフ

自己承認欲求と作文欲求の結晶

笠原メイを求めて

いま一番自信のあることは

一冊だけ本をオススメするとしたら

迷わずに『ねじまき鳥クロニクル』を紹介することだ。

 

日本に帰って自分の家の自分の部屋に行き、

自分の本棚からその本を引っ張って裏表紙を見れば自分がかつて

いつその本を読破したのかがきっと書いてあると思う。

 

ちょっといまはその時期について思い出せないのだけど、

その本を初めて読み終えたとき

自分の中の何かが変わって、その本を読む前の自分と読んだあとの自分では

違う自分であるような気がしたことはよくよく覚えている。

 

あるいはこの本を読んだことがある人はわかるとおり、

一貫して複数人の人の変化というものが書かれているわけだから

その影響を受けてなんだか読んでいる自分まで変わってしまったような気が

ただただしているのかもしれない。

 

でも仮に真実はそんな他愛もないことだったとしても

本を読み始める前と読み終えたあとで自分が変わっちゃったなんて感じること自体は

そんなにやたらめったらできる経験ではないし

少なくともその時が自分にとっては初めてでとても奇妙な感じがしたということも

また事実なのだ。

 

 

 

 

今回ひょんなことから、ここドイツでその三冊の本を手に入れ

(正確には三冊あるので一冊のオススメではなかった。)

貪るように空いた時間を全て使って読んだのだった。

 

自分が変わった、なんて思った一度目の読書は実は

この本を読むのがイヤでイヤで、つまらなくてしょうがなかった。

面白くなるまで一ヶ月以上かけてダラダラと読み進めなくてはならなかったし、

だからこそ意味のわからないまま、

まるで暗闇をただただ進んで行くまま読みすすめたその本を読み終えたとき

なにか違った感触がしたのかもしれなかった。

 

 

このような経緯があったために、

今回の旅は、一度読んだはずの本にいくつもの新しい発見をすることができ

そのことでさらに楽しむことができた。

 

そしてテーマが見えるようで見えず、

謎は最後まで謎のままで残り

なにかを示唆しているようでなにも意味をなしていないようにもみえ

それらによって全体を薄いベールのようなもので包まれている

この本の、

自分なりのテーマというものを見つけることができた。

 

 

一年後にもう一度開いた時にはまた

違った見方ができるかもしれない。

 

今回は、ただ自分の結論がそうであった

というだけのことかもしれないが

それでもまたこの本によって自分の中に

ひとつの変化を起こせたと感じている。

 

 

おれは笠原メイが好きだなと思う。

 

 

人生を変える力が内在しているこの本を勧めたい。

笠原メイを求めて