『きいろいゾウ』
なにかと、この本の中身が引用されている場面にあうものだから、
ちょっと気になって読んでみた。
読んでみようとおもってAmazon開いていたんだけど、
ふと後ろを見ると本棚に入っていた。不思議。
少し読んでみると記憶が戻る。前に読んでいたんだった。
たしかつまらなくてやめたやつだ。
今回もはじめの方はそれほど進まない。幸せな描写になんか気持ち悪さを感じる。
中盤になると、しっかりその違和感の正体も明らかになって、
徐々にページをめくるスピードはあがっていく。
結果的にはおもしろかった。
ただ、勝手なイメージとは反して、それほど教訓めいたことは出てこなかったし、
ごくふつうな物語でなぜこれほど取り上げられていたのかはわからなかった。
(もちろん、理解不足)
中身は、あえていうと、村上春樹の小説をわかりやすく、易しく書いたものように感じた。
お互い深い問題を抱え、喪失した、男女の再生の、愛の物語
こうに言えばいいのか。
ただ本書では、その原因、問題、対処が実に具体的で現代的でわかりやすく、理解しやすい。
そういう意味で、似ているけど易しい。または優しい本だった。
それでも一点気になったのは、とても具体的な描写と展開であるにも関わらず、
一方で非現実的なものも入り込んでいて、
それがすごくザ・小説って感じでおもしろかったということ。
つまり、基本的には現実的な男女の話しであるから、
一部の非合理な部分をフーンと読み飛ばす事もできるし、
フフンと鼻で笑ってなかったことにすることもできる。しかしそれをしない。
ツマの想像や村で起こる奇妙な出来事に、あるいはきいろいゾウの話しに、
そんなことももしかしたら本当にあるのかもしれない、
と真剣に向き合うのだ。
そしてそこに真剣に向き合う事によって、
具体的な問題の表面だけではない奥深さを感じることができるのだとおもう。
そんなところに小説文のおもしろさをみた。
すべては読者に委ねられている。
真剣に向き合えば向き合うほど、味が変わる。
でも向き合わなくったって読めるし楽しめる。
中身はそれほど響かなかったけど、その小説的おもしろさを突きつけられた本だった。