南紀ぶらぶら (熊野詣で)
帰国後からの三ヶ月あまり、これといってどこかへ出かけることもなく過ごしていた。
それは、別に何処かへいきたいといったような欲望を抱かなかったからであるが、いままでの自分の行動からみたらすこし不思議なことであり、一時期は、そういう欲求みたいのものが自分のなかからすっかりなくなってしまったのかと不安に感じたこともあった。
だけどまあ、今回急に遠くへ行きたくなったので、せっかくだからと、その思いに従ってみた。
行き先については、行き帰りが夜行バスの一泊三日日程で行けるところであり、かつ、行ったことがなくてゆっくりした時の流れを感じられるところを選んだ。
方法は、三重交通の東京は池袋からの夜行バス。けっこう値ははってしまったが、ひさしぶりなのと時間がないということで妥協。
分かれ道を楽そうな方に進んで行ったら彼岸島に出てきそうなトンネルに通せんぼされたり、
事故車が放置されてたり
ちょっとしたホラーを味わいつつ登ったり降りたりして一つ目の峠を終えた。
なによりすごかったのは、植物たちがやりたい放題好き勝手していて道という道がなかったこと。
痛かった。
木の棒を杖として持っていなかったら蜘蛛がはるトラップにも引っかかっていただろう。
草と蜘蛛と幹がとても邪魔だった。
すこし国道や民家(?)のある道を歩いて二つ目の峠へ。
ちょっと道が分かれるようなところには必ず目印が出ているので、これと自分の地図を合わせれば、ふつうの人は迷わない。なんどか引き返したけど。
第二ラウンドはけっこう工事が行われているところが多かった。あとで地元のひとに聞くと、新たに高速道路が作られるらしい。
工事の影響で古道の途中がこんなんになっているところもあった。
あとおもしろかったのは、この15キロ超の歩行の道中、おんなじように歩いているひとは一人もおらず、山のなかでは人間には会えなかったのに、鹿のこどもとは二匹も会えたこと。
はじめは、山の動物ネットワーク的なものでボスザルに伝えられて石でも投げられるんじゃないかとビクビクしていたけど、さいわいそのようなことは起きなかった。
標識が途絶えてしまい半信半疑のままおそるおそる進んだ小川沿いの道では何度もコケに足を滑らせながらも、とりあえず二個目の峠も降りられた。
そして再び国道を歩いているときに、まさかの出来事が起こった。
続くー