『女子高生サヤカが学んだ「1万人にひとり」の勉強法』
大学の図書館で目に付いた本。
内容もさることながら、山村(仮名)家と無期懲役囚人の美達大和さんとの関係もおもしろい。
女子高生のサヤカと男子中学生のヒロキのふたりと、美達さんとの手紙のやり取りは、時系列で並べられていて、徐々にふたりが美達さんを頼りにしていくのがわかる。
少し語弊がある気がするけれどあえて言うならば学生のふたりはもとより、オトナである母と父ですら、時が経つにつれて美達さんに依存していくのだ。
もちろん、無期懲役囚という独特の立場が醸し出す雰囲気やそれとのギャップというのはあるだろうけど、基本的にはそれ自体は関係なく、その相手は誰でもよかったのではないかという気がする。
そして、依存の相手として選ばれた美達さんは、それはもう完璧と言えるような人格の持ち主であったわけであるから、この家族はしあわせなのだろう。
これを読んでまずおもったのは、人間はどこかに確固たる拠り所を望んでいるのであり、神がいない日本において、それは簡単に他人の役割になりうる。そのこと自体は自然なことであるのだから、やっぱりその拠り所さんの質は重要になってくるであろうということ。
こういう存在がいるのかいないのかではだいぶ違ってくるんじゃないかなとおもう。
自分にはこれという存在はいないから少し不安だったりもするし。
で、肝心の内容的には、
人間に大切なことは、頭のよさではなく、やり抜く、イヤなことでも決めたら続ける意志の強さです。これが重なると「根拠のある自信」になります。(p22 l13)
苦しさに耐える、苦しむほど自分の力はつきます。すると、大人になってから、人生の可能性や選択肢も広がるのです。自分に楽をさせると心身ともに弱くなります。(p155 l15)
どのように弱点を強化するのか、そのことに注意を向ける人はやがて伸びていきましたが、単に自分はダメだ、また断られるのではないかと自己否定ばかりで過ごす人は辞めていくしかありませんでした。(p128 l11)
といったような部分に集約されているとおもいます。
持続できるかどうか、弱い自分と向き合うことができるかどうかのみに、選択肢の多い豊かな人生が送れるかどうか、がかかっている。といった内容でした。
この本のすごいところは、上記の言葉をみればわかる通り、文字に起こしてしまうと、なんともありきたりで素通りしてしまいそうな内容なのに、それが実際の手紙で、しかも無期懲役囚と学生との文通から生まれたもので、さらには出版がそれら本人たちではなく第三者の母、父からなされているという事実がやけに説得力をもたせるというところです。
あとは、おふたりの実話からみえる実際の成長というところも作用しているかもしれない。
それと、勉強する目的の答え方もとてもおもしろくて参考になった。気になるひとはぜひパラパラとでも読んでほしい。
ではこのへんで。